[アップデート] Amazon Cognito ユーザープールに機能プランの概念が導入され、料金計算方法が変わります
いわさです。
今朝アナウンスされましたが Amazon Cognito ユーザープールに機能プランという概念が登場しました。
まず、Cognito ユーザープールの料金は月間のアクティブユーザー数(Monthly Active Users / MAU)によって算出されます。
これまではオプションの高度なセキュリティ機能などを有効化するかどうかで MAU ごとに追加コストが発生するような形でした。
今後はユーザープールごとに機能プラン、要は使える機能の異なる料金プランを選択する形になります。
先にまとめ
- Cognito ユーザープールに機能と料金の異なる3つのプラン Lite / Essentials / Plus という概念が追加された。
- 既存ユーザープールのプランは「Lite」プランとなる
- 従来のユーザープールと Lite プランで料金は変わらない(無料枠だけ注意)
- 既存で「高度なセキュリティ機能」を有効化していたユーザープールでは Lite + 高度なセキュリティ という料金プランが利用出来る
- 要は、従来相当の Lite に加えて Essentials と Plus プランが追加された
- この2つは新機能および旧高度なセキュリティ機能が使える。高度な機能の一部が使える Essentials と、フル機能が使える Plus という感じ。
- これまで高度なセキュリティを使っていた方は、Essentials か Plus に切り替えることでかなりコスト削減出来る可能性あり
- 従来の高度なセキュリティ機能の全機能までは必要なかったが、アクセストークンカスタマイズなど「ほぼ必須だろそれ...」みたいな機能は Essentials に含まれている
- 100,000 MAU くらいまでであれば Essentials で 75%、Plus で 60% くらいコスト削減出来る
- MAU 5,000,000 あたりから Plus のほうが逆に高くなりそう
料金体系の比較
アップデート前後の料金体系について、東京リージョンの単価で比較を行いました。
主に各プランおよび MAU 数による階層化された単価を中心に比較しています。
フェデレーションサインインや、追加のスループットなどのオプション料金は従来と同じなのでそこは比較しません。
また、無料枠および MAU の階層はおそらく従来と同じように Organiztions ごとにカウントされます。
自己管理した Organizations 配下でない場合、割り当てが期待どおりにならない可能性があるので試算の際はご注意ください。
従来
従来は次のように最初の MAU ごとに階層化された料金単価が設定されています。
MAU | MAU あたりの料金 |
---|---|
0 ~ 50,000 | 無料 |
50,001 ~ 100,000 | 0.0055 USD/MAU |
100,001 ~ 1,000,000 | 0.0046 USD/MAU |
1,000,000 ~ 10,000,000 | 0.00325 USD/MAU |
10,000,001 ~ | 0.0025 USD/MAU |
また、様々な追加機能を使えるようにする「高度なセキュリティ機能」というオプションをユーザープールごとに有効化することが出来まして、これを有効化すると次の料金が全 MAU に追加されます。
MAU | MAU あたりの料金 |
---|---|
0 ~ 50,000 | 0.050 USD/MAU |
50,001 ~ 100,000 | 0.035 USD/MAU |
100,001 ~ 1,000,000 | 0.020 USD/MAU |
1,000,000 ~ 10,000,000 | 0.015 USD/MAU |
10,000,001 ~ | 0.010 USD/MAU |
ややこしいことを色々無視して雑に説明すると、基本機能で 1 MAU あたり約 0.005 USD、高度なセキュリティ機能を使うと約 10 倍になるという感じです。
アップデート後
新しい料金はどうやら 11 月 22 日分から適用されるようです。
まず次のようにユーザープールに Lite / Essentials / Plus の 3 つのプランの概念が存在します。
プランごとに使える機能が差別化されており、Plus がフル機能、Lite が最低限の機能、Essentials が中間という位置づけになってます。
Plus は従来の高度なセキュリティ機能と、別で追加されたいくつかの新規機能が使えます。脅威保護機能など使いたい場合はこちらを選択しましょう。
Plus の単価は階層化されておらず、一律 0.02 USD/MAU となってます。
MAU | MAUあたりの価格 |
---|---|
0 ~ | 0.02 USD/MAU |
Essentials は従来の高度なセキュリティ機能のうちいくつかの主要機能が含まれているプランになっています。
アクセストークンカスタマイズや、認証オプションを使うことが出来ます。
こちらも階層化されていない一律の料金(無料枠あり)で、Plus プランよりちょっと安くなっています。
MAU | MAUあたりの価格 |
---|---|
0 ~ 10,000 | 無料 |
10,001 ~ | 0.015 USD/MAU |
Lite は従来の Cognito ユーザープール相当の機能が備わっているので、従来出来ていたことができなくなるというわけではありません。最低限であればこちらが良いと思います。
無料枠のカウントがちょっと違いますが料金単価は従来と同じです。既存でユーザープールを使っていた場合は従来と同様に無料枠は 50,000 MAU となるようです。
MAU | MAUあたりの価格 |
---|---|
0 ~ 10,000 | 無料 |
10,001 ~ 100,000 | 0.0055 USD/MAU |
100,001 ~ 1,000,000 | 0.0046 USD/MAU |
1,000,001 ~ 10,000,000 | 0.00325 USD/MAU |
10,000,001 ~ | 0.0025 USD/MAU |
さらに、Lite プランには従来の高度なセキュリティ機能の概念があり、そちらの料金も従来と同じものとなっています。
MAU | MAUあたりの価格 |
---|---|
0 ~ 50,000 | 0.050 USD/MAU |
50,001 ~ 100,000 | 0.035 USD/MAU |
100,001 ~ 1,000,000 | 0.020 USD/MAU |
1,000,000 ~ 10,000,000 | 0.015 USD/MAU |
10,000,001 ~ | 0.010 USD/MAU |
既存ユーザープールは Lite あるいは Lite & 高度なセキュリティプラン
既存のユーザープールは Lite プランが設定されているはずです。
また、高度なセキュリティ機能を有効化していた場合は Lite + 高度なセキュリティ機能が選択されていました。
なお、高度なセキュリティ機能を有効化していた場合は Essentials か Plus プランに移行がしたほうがコストをかなり削減することが出来ます。
後ほど試算・比較したものを紹介するのでぜひ検討してみてください。
新規のユーザープールのデフォルトは Essentials
アップデート以降に新規でユーザープールを作成した場合、プランは Essentials となりました。
ユーザープール作成時には選択はしません。
ただし、アクティブユーザーがカウントされたタイミングでユーザープールの機能プランに応じた料金単価が設定されるので、ユーザー作成前であればあまり気にせずプラン変更して良いと思います。
Lite がデフォルトじゃないよということだけまず抑えておきましょう。
試算してみた
アップデートアナウンスによると、高度なセキュリティ機能を使っていた人は Plus に移行することで最大 60 % 削減出来るらしいです。本当か?
試算してみました。
「ASF」というのが高度なセキュリティ機能です。「前」というのはアップデート前の単価で計算したものとなり、MAU 列は MAU 数、あとは合計の USD(月額) です。
MAU | 前 | 前+ASF | Lite | Lite+ASF | Essentials | Plus |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | - | 0 | - | 0 | - | 1 |
10 | - | 1 | - | 1 | - | 1 |
100 | - | 5 | - | 5 | - | 2 |
500 | - | 25 | - | 25 | - | 10 |
1,000 | - | 50 | - | 50 | - | 20 |
5,000 | - | 250 | - | 250 | - | 100 |
10,000 | - | 500 | - | 500 | - | 200 |
50,000 | - | 2,500 | 220 | 2,720 | 600 | 1,000 |
100,000 | 275 | 4,525 | 495 | 4,745 | 1,350 | 2,000 |
500,000 | 2,115 | 14,365 | 2,335 | 14,585 | 7,350 | 10,000 |
1,000,000 | 4,415 | 26,665 | 4,635 | 26,885 | 14,850 | 20,000 |
5,000,000 | 17,415 | 99,665 | 17,635 | 99,885 | 74,850 | 100,000 |
10,000,000 | 33,665 | 190,915 | 33,885 | 191,135 | 149,850 | 200,000 |
50,000,000 | 133,665 | 690,915 | 133,885 | 691,135 | 749,850 | 1,000,000 |
見てみると、無料枠の違いで 従来と Lite で少しだけ差がありますね。
確かに、高度なセキュリティ機能を使っていた場合は必要な機能にあわせて Essentials あるいは Plus に移行することでかなり料金を抑えることが出来そうです。
ただし、Essentials への移行の場合は 50,000,000 MAU、Plus の場合は 5,000,000 MAU あたりから逆に高くなります。私の観測範囲だとここまで大規模に Cognito を使うケースは稀なので、高度なセキュリティ機能を使っている多くの方はおそらく新プランでコスト削減の恩恵を受けることが出来るでしょう。
プラン変更する
プラン変更ですが、ユーザプール概要のラベルから機能プラン選択画面に遷移出来るのでそこから選択するだけで切り替えが出来ます。
ただし、Lite プランにダウングレードしようとした場合、デフォルトだと次のようにプランが表示されていないのでちょっと注意が必要です。安心してくださいダウングレード自体は可能です。
「他のプラン」というラベルから「ライトと比較」を選択すると表示・切り替えることが出来ます。
新規ユーザープールの場合はデフォルトで Lite で使えない機能が有効化されており、そのままダウングレードが出来ないので、機能の無効化などが必要です。
ここではマネージドログイン機能を無効化(旧ホストされた UI に戻す)することで切り替え出来ます。
ダウングレード出来ました。
さいごに
本日は Amazon Cognito ユーザープールに機能プランの概念が導入されたので料金比較と試算、実際のプラン切り替えなど試してみました。
最初にまとめましたが、従来のユーザーに悪影響が出るようなアップデートではないと思います。
基本機能のみ使っていた方はそのままの料金で引き続き使うことができ、高度なセキュリティ機能を使っていた方はよりコスト効率の高いプランを選択してコスト削減を行うことが出来ます。
これを機にユーザープールのプラン検討や、不要ユーザーの棚卸しなどしてみてください。